
アステラスは、健全な地球環境の維持は持続可能な社会の構築の重要な課題であると同時に、事業活動を継続する上での重要な課題であると考えています。アステラスが持続可能な成長を遂げるためには、気候変動問題や環境汚染、廃棄物処理など地域環境に影響する課題に対して、社会が企業に求める責任を果たす必要があります。長期的な時間軸とグローバルな視点から企業のあるべき姿を描くとともに、地域社会における課題に対しても継続的に取り組み、地球環境と調和した企業活動を進めていきます。
取締役会の監督体制
取締役会は、気候変動対策をサステナビリティの重要課題と位置付け、四半期ごとに取り組みの進捗状況をレビューしています。また、アステラス・サステナビリティ部門は、気候変動対策を含むサステナビリティ関連の取り組みの進捗状況を毎年度取締役会に年次報告書として提出し、モニタリングの一助としています。取締役会は、このモニタリングプロセスを通じて、経営の有効性を監督しています。
執行体制
アステラスは、サステナビリティを重要課題と認識し、業績評価指標(KPI)を設定・モニタリングしています。気候変動対策については、2030年までの達成を目指す温室効果ガス排出削減目標とKPIを通じて進捗状況を評価しています。再生可能エネルギーの導入も、進捗状況を測る上で重要な指標です。サステナビリティ長を委員長とし、Chief Strategy Officer(CStO)直轄のサステナビリティ コミッティが、環境行動計画を策定・運用しています。コミッティは、アステラスの環境行動計画を5年ごとに見直し、その妥当性を維持し、必要に応じて改善策を提案します。さらに、温室効果ガス削減に向けた長期計画やTCFD(気候変動関連財務情報開示)への対応状況も評価します。
環境に関するリスク管理はファンクショナルユニットのサステナビリティによりモニタリングされ、CStO (Chief Strategy Officer) が定期的に報告を受け、必要な指示を行う体制です。特定されたリスクへの対応は、課題の重要度に応じて代表取締役社長CEOが議長を務めるエグゼクティブ・コミッティ†や取締役会にて協議し、意思決定を行っています。
†アステラスグループ全体の経営上の重要案件を協議する機関
アステラスは、企業価値の持続的向上を使命とし、企業価値向上のため、患者さん、株主、社員、環境・社会など、すべてのステークホルダーから選ばれ、信頼されることを目指しています。アステラス行動基準には、「私たちは持続可能な企業活動を行い、環境負荷を最小限に抑えるよう努め、気候変動や資源循環等の地球規模の課題にも取り組みます」とあります。アステラスは、社会と当社事業にとって最も重要な課題を特定し、優先順位を付けるマテリアリティアセスメントを実施し、サステナビリティへの取り組みの指針としています。2022年3月期に策定したアステラスのマテリアリティマトリックスでは、「気候変動とエネルギー」が社会とアステラスの2つの観点から、「非常に重要」と認識されました。2026年に更新されたマテリアリティにおいては、環境の持続可能性がマテリアルトピックスの一つとして特定されました。気候変動対策の進捗をモニターするための主要なKPIとして、温室効果ガス(Scope 1+2およびScope 3)の排出量に目標値を設定しています。
2050年のネットゼロを社会が目指すゴールと捉え、バックキャスティングで2030年目標を設定しました。2018年にからアステラスのGHG排出削減目標はパリ協定の2℃目標に整合的な目標としてScience Based Targets initiative (SBTi)から認証を取得しました。現在の目標は2023年1月に公表したもので、2015年度を基準年とした2030年度を目標年度とする目標であり、SBTiからパリ協定の1.5℃目標(スコープ1+2)およびwell-below 2℃目標(スコープ3)に整合的な目標として認められています。
目標達成のために、再エネ由来電力の活用(自社敷地への太陽光パネルの設置、オフサイトコーポレートPPAの活用)、低排出車の営業車への採用、バリューチェーンパートナーとのエンゲージメント推進などに取り組んでいます。
2050年ネットゼロの目標達成のために、オペレーションで90%の削減を目指すとともに、残余排出量について中和化を長期的課題として検討します。中和化の手段としてはCarbon Dioxide Removalなどが想定されますが、どのような技術を活用するかについては今後の課題であり、現時点では中和化は用いていません。
温室効果ガス削減の2030年目標および2050年ネットゼロの方針は2023年1月にエグゼクティブ・コミッティにより承認されました。
目標達成のための環境課題への取り組みはサステナビリティ目標の一つとして役員賞与(短期インセンティブ報酬)算定項目の一つとして達成度を評価され、全社経営戦略の達成度を評価する際に考慮されています。
アステラスの温室効果ガス排出削減目標はスコープ1とスコープ2を合算した目標と、スコープ3目標から構成されています。
| 項目 | 目標 |
|---|---|
| スコープ1+2 | 排出量を2030年度までに63%削減する(基準年:2015年度)「1.5℃目標」 |
| スコープ3 | 排出量を2030年度までに37.5%削減する(基準年:2015年度)「well-below 2℃目標」 |
スコープ1+2の排出削減は再エネ由来電力の導入を主な手段として推進しています。自社敷地に設置する太陽光パネル発電設備についてはこれまでつくば研究センター、ケリー工場、ダブリン工場、瀋陽工場などで設置を推進しました。再エネ由来電力の購入については、高萩技術センター、つくば研究センター、つくばバイオ研究センター、富山技術センター、焼津技術センター、ダブリン工場、ケリー工場、ユニバーサルセルズなどで活用推進しています。
バリューチェーンパートナーの温室効果ガス排出削減に向けたエンゲージメントも推進しています。これまで、調達購入金額が多いパートナーを招待して開催したオンラインミーティングでアステラスの取り組みの認知を得るとともに、ビジネスパートナーが算定する温室効果ガス排出データ(プライマリーデータ)の活用に向けた検討を推進しています。
GHGプロトコルに基づき算出したSBT目標の進捗は次の通りです。
環境行動計画の進捗(スコープ3)
| 指標 | 対象 | 単位 | 2015年度 | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| Scope3排出量 | グローバル | t-CO2e | 1,378,972 | 1,121,350 | 1,276,323 | 1,123,857 |
| 削減率(対2015年度) | グローバル | % | - | -19% | -7% | -19% |
TCFDのリスク分類を参照してシナリオ分析を実施しました。
| 急性的 | 洪水などにより自社事業場の操業が停止する サプライチェーンが機能しなくなる。 |
| 慢性的 | 渇水による自社工場およびサプライチェーンの操業に影響がおよび、製品出荷の遅延が発生する 平均気温が上昇した場合、事業場の空調運転に伴うエネルギーコストなどに影響が出る。 |
移行リスクについてもTCFDリスク分類を参照しました。
| 政策と法 | 再生可能エネルギーの導入が進んでいない事業場に対して炭素税の支払いがコストとして上乗せされる可能性がある。 |
GHG排出規制に伴う既存施設の陳腐化、減損処理
| |
| テクノロジー | 低排出設備への投資に伴いコストが発生する。 |
| 市場 | エネルギーあるいは原材料の価格上昇がコスト上昇につながる。インフレはコスト上昇を悪化させる。 |
気候変動に関しては、社内に情報開示に関する部門横断チームを設置し、シナリオ分析を実施しています。気候変動は1.5℃シナリオで移行リスク、4℃シナリオで物理的リスクが顕在化するという想定の下、アステラスの事業に関する気候変動のリスクと機会を分析しました。分析結果は、サステナビリティコミッティでレビューされました。
分析対象期間は、短期(1年)、中期(1~5年)、長期(5年以上)です。2021年度からは、毎年、気候関連リスクと機会の分析を実施しています。2024~2025年度には、アステラスの主要拠点およびバリューチェーンにおける物理的リスク分析を実施しました。
2025年に実施した物理リスク検討の際には、アステラスの拠点(20ロケーション)に加えて主要製品の原薬製造等に関連するCMO(19ロケーション)と主要な物流拠点(20ロケーション、主要な15のマーケットをカバー)を分析対象に含めました。
広く認められているシナリオとして、IPCCシナリオを参照しています。物理リスク分析においては、高排出シナリオであるSSP5-8.5シナリオを参照しました。移行リスク分析においては、SSP1-1.9、SSP1-2.6シナリオを参照しました。参照するシナリオの決定に際しては、IPCC第6次評価報告書(AR6)、 IPCC特別報告書 “Global Warming of 1.5℃” 、国際エネルギー機関(IEA)”Net Zero by 2050”などを参照しました。
物理リスク分析で参照したSSP5-8.5シナリオでは産業革命前と比較した21世紀の終了時点における平均気温の上昇は4.5℃と想定されます。化石燃料を積極的に利用し、大規模な工業化やインフラ開発が進むことが前提となります。技術革新における脱炭素関連の優先度は低いことが想定されます。移行リスク分析で参照したSSP1-1.9、SSP1-2.6シナリオは平均気温の上昇はそれぞれ1.5℃および2℃弱と想定され、脱炭素を推進する政策が採用されると同時に中和化など脱炭素社会の実現に必要な技術革新も推進されることを前提としています。
物理リスク分析はアステラスの主要拠点(工場、研究所および主要オフィス)およびバリューチェーンを対象としました。移行リスク分析はアステラスグループ全体を対象としています。評価対象となった拠点のほとんどは、東アジア、北米、欧州にあります。
物理的リスク(急性/慢性)
リスクマトリックス分析において、アステラスの施設の中で最もリスクが高いのは瀋陽工場でした。4℃シナリオでは、2050年における洪水、熱波、降水リスクの増大が潜在的な課題として検出されました。
注: 物理的リスクの影響は、各サイトが 90 メートルのグリッド解像度で位置する場所に基づいて分析されたため、現在導入されているリスク軽減策は考慮されていません。そのため、実際の影響はここで推定される損失と異なる可能性があります。
現在のリスクと、>4°Cシナリオにおける現在と将来(2050年)のリスク変化
リスクスコアは、各ハザードがもたらす平均リスクを正規化した推定値。4℃シナリオにおいて、ハザードの種類に応じて1~3つの指標を用いて算出される。例えば、降水リスクは100年に1度発生する事象における1日の最大降水量を指し、山火事リスクは年間の山火事発生確率を指す。
アステラスに影響を及ぼす可能性のある主なリスク
降水
本分析では、全地点において豪雨の発生頻度が増加すると予測されています。焼津技術センターの所在地では、4℃シナリオを用いた2020年モデルでは50年に一度の豪雨レベルの降雨量が1日あたり357mm、2050年モデルでは398mmと推定されました。
| 拠点名 | 国 | >4°C シナリオでの一日最大降水量(ミリメートル) | |||||
| 10年に一度レベル | 50年に一度レベル | ||||||
| 2020モデルのベースライン | 2050 | % 変化 | 2020モデルのベースライン | 2050 | % 変化 | ||
| 焼津技術センター | 日本 | 252 | 279 | 10 | 357 | 398 | 12 |
洪水
富山技術センターの立地は、100年に一度発生する可能性のある最大8.5メートルの洪水の危険性があるとされ、特に懸念されます。高リスク地域における洪水リスク対策を評価し、2050年までに潜在的な洪水リスクへの対応が十分に整っているかを確認する必要があります。
熱波
現在、アステラスにとって熱波は大きなリスクではありません。1~100のスケールで評価した場合、現在の平均リスクは29です。しかし、気温上昇が4℃を超えるシナリオでは、2050年までに熱波リスクが顕在化する可能性があると示唆されています。Astellas Gene Therapies Sanfordの所在地では、2050年には年間最高気温が35℃を超える日数が41日になると推定されています。建物の冷却が不十分な場合、熱波によって 従業員の生産性に影響が生じる可能性があります。
>4℃シナリオで2050年に35℃を超える日数(アステラス拠点)
| 拠点名 | 国 | 年間で35℃を超える日数 | ベースラインからの%変化 |
| Astellas Gene Therapies- Sanford | 米国 | 41 | 78 |
強風
強風は、建物が耐風設計になっていない場合、甚大な被害をもたらす可能性があります。しかしながら、日本には厳格な建築規制があり、建物の立地、高さ、用途に応じて定められた風速荷重に耐えられるよう設計することが義務付けられています。
2050年に100年に1度レベルの突風(風速200 km/h以上)が観測される拠点
| 拠点名 | 国 | 突風 (km/h) |
| 焼津技術センター | 日本 | 232 |
その他
寒冷は現在高いリスク スコアが示されていますが、2050 年までにすべてのサイトでリスクは大幅に低下します。山火事はリスクが示唆されている 3PL (サード・パーティー・ロジスティクス)がありますが、雹/雷雨はいずれの場所においても高いリスクは示されていません。
移行リスク(規制、技術、需要、評判)
移行リスクとして、炭素税負担、気候変動対策の設備投資、電気料金の価格上昇などをシナリオ分析しました。潜在的な影響などについて、次セクションの表を参照ください。
| 気候変動によるリスク | 潜在的な影響 | 財務への影響 | 影響を受ける期間 | 当社のレジリエンス |
|---|---|---|---|---|
| 移行リスク(1.5℃シナリオで顕在化するリスク) | ||||
| 政策と法 | ||||
| GHG排出価格の上昇(炭素税の支払いによるコスト上昇) | 再生可能エネルギーの導入が進んでいない事業場に対して炭素税の支払いがコストとして上乗せされる可能性がある。 | Scope 1+2: 2030年度に1トンあたり100ドルの炭素税を想定すると11億円 | 中期~長期 | 事業所で消費する電力の一部は、風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用して自家発電されている。 事業所において購入する電力を再生可能エネルギー由来電力への切り替えを推進している。 スコープ1排出量削減のための排出権クレジットの購入と、購入に伴うコスト抑制策については、今後の検討課題となる。 |
| Scope 3: 2030年度に1トンあたり100ドルの炭素税を想定すると100億円 | 中期~長期 | スコープ3 カテゴリー1:原材料の使用最適化に取り組む。サプライチェーンのサステナビリティロードマップを策定し、購入製品のCO2排出量データを分析し、排出量削減を優先的に進める。 | ||
| GHG排出規制に伴う既存施設の陳腐化、減損処理 | 環境規制の強化により、設備の廃棄を求められる可能性がある。 フロンガスを用いた冷凍設備と化石燃料を使用する車両は、2035年以降一部の国で利用できなくなる可能性がある。 | 影響は軽微 | 中期~長期 | 廃棄を迫られている既存設備・資産はない。フロンガスについては、法令を遵守し、適切な措置を講じている。 2030年以降は、自動車の進化(内燃機関から電気モーター・EV、燃料電池へのシフト)への対応が求められる。営業車両やトラックのEV化、輸送手段のモーダルシフトは、事業運営に影響を及ぼす。 |
| テクノロジー | ||||
| 低排出技術に移行するためのコスト | 低排出設備への投資に伴いコストが発生する。 | 12億円 当社の気候変動投資額から推計。 | 短期~長期 | 炭素税負担を軽減するため、効率的なプロジェクトを選択し、投資する。 太陽光パネル発電など比較的規模が大きいプロジェクトについては、電力購入契約など、投資以外の手段を検討する。 |
| マーケット | ||||
| エネルギーコストの上昇 | エネルギーあるいは原材料の価格上昇がコスト上昇につながる。インフレはコスト上昇を悪化させる。 | 電力1kWhあたり10円の値上げで、費用負担は20億円増加する。 | 短期~長期 | 今後、規制変更に伴う事業所における電力・エネルギー消費コストの増加は課題となるが、気候変動による医薬品製造原料コストの大幅な上昇は想定していない。 再生可能エネルギー由来の電力を活用することで、化石燃料価格上昇の影響を軽減する。 |
| 物理リスク(4℃シナリオで顕在化するリスク) | ||||
| 急性的 | ||||
| 洪水その他の急性的な極端な気象 | 洪水などにより自社事業場の操業が停止する。 サプライチェーンが機能しなくなる。 | 5億円 富山技術センターの洪水対策を参考に算出。 | 短期~長期 | 富山技術センターの浸水対策は以下の内容からなり、投資額は5億円と見積もられた。 - 受電棟周囲に高さ3mの防水壁を設置 - 高さ3m以上の変電設備を新設 - 発電機を購入 同様の対策が必要な場合は、同額の投資を検討する。 |
| 慢性的 | ||||
| 降水パターンの変化 平均気温上昇 | 渇水により自社工場およびサプライチェーンの操業に影響がおよび、製品出荷の遅延が発生する。 平均気温が上昇した場合、事業場の空調運転に伴うエネルギーコストなどに影響が出る。 | 影響は軽微 | 短期~長期 | IPCC AR6 SPM SSP3-7.0シナリオによれば、2050年の世界全体の海面上昇は1900年と比較して0.5m未満であり、このレベルの変化は事業に重大な影響を与えない。 降水パターンの変化は、当社の事業に重大な影響は想定されない。 平均気温上昇の分析は、下記の物理的リスクの地理的分析を参照 |
| 気候変動による機会 | 財務への潜在的な影響 | 影響を受ける期間 | 当社の対応 | |
|---|---|---|---|---|
| 資源効率 | 効率的な生産および流通プロセスの使用 ・リサイクルの利用 | 運営コストの削減 | 短期~長期 | 感染症の流行や地震、風水害などの自然災害時においても医薬品の安定供給を維持するため、国内に3つの物流センターを運営している。 ヨーロッパ各国、アメリカでは、製薬メーカー複数社が共同利用する倉庫を使用し、流通プロセスの効率化を図っている。 研究・生産サイトの空調排熱を回収し、給気の加温に利用し熱利用効率を高めている。 |
| エネルギー源 | より低排出のエネルギー源の使用 | 炭素費用の変化に対する感度低下 | 短期~長期 | ボイラー燃料を液体燃料から気体燃料に変更している。 営業車両のハイブリッド車および電気自動車の導入を推進している。 アイルランド・ケリー工場で風力発電およびバイオマスボイラーの利用に取り組んでいる。 |
| 製品、サービスと市場 |
| 変化するニーズに対応し、収益の増加 | 長期 | 気候パターンの変化により疾患の蔓延地域、罹患率、重症化率が変化する可能性がある。心疾患、呼吸器疾患なども増加の可能性がある。 |
シナリオ分析からは、物理リスク、移行リスク共にアステラスの事業にクリティカルな影響を与える脆弱性は見出されていません。再エネの活用推進を進めてきたことは今後の炭素税負担増の可能性に対してレジリエンスを発揮する要素となっていると分析されています。
IPCCで提示されているシナリオの温度上昇については幅を持たせた推計となっています。IPCC AR6 Summary for Policymakers Table SPM.1においてSSP-8.5シナリオの2041-2060年の気温上昇はbest estimateで2.4℃、very likely rangeで1.9 – 3.0℃とされています。SSP1-1.9シナリオでは2041-2060年の気温上昇はbest estimateで1.6℃、very likely rangeで1.2 – 2.0℃とされています。
SSP5-8.5 は「化石燃料依存のまま高排出が継続する」極端シナリオであり、化石燃料異存の継続性に不確実性があります。SSP1-1.9およびSSP1-2.6シナリオにおいては化石燃料の使用制限のための制度(高負担の炭素税など)の導入、およびCarbon Dioxide Removalなどネットゼロ実現に必要な技術開発の実現に不確実性があります。
太陽光発電設備の設置など気候変動対策としての設備投資は医薬品製造の設備投資の範囲内で実施しており、気候変動対策のための資金調達(グリーンボンドの発行)などは想定していません。
気候変動対策を目的として、既存設備の転用・廃棄が必要になる事態は想定していません。設備更新の際には環境性能に優れた設備の導入に努めています。
最近の主な投資としては建設中のアイルランド、トラリー工場があります。新工場は、アステラス製薬のサステナビリティ実現に向けた考え方に沿って建設され、エネルギーと環境設計におけるベストプラクティスを採用しています。工場建設では、LEED®ベースラインと比較して、水の使用量を約50%、操業時のエネルギー強度を1/3以上削減し、埋め立て廃棄物をゼロにすることを目指します。従ってこの投資はアステラスのレジリエンスを強化すると期待されます。
ポリシーステートメントの「気候変動への対応についての基本的な考え方」で示している通り、気候変動の緩和のために長期的で幅広い視野を持って環境に対する企業の責任を果たしていくことを掲げています。エネルギー使用効率の向上と温室効果ガス排出削減に取り組むことを表明するとともに、パリ協定の目標に整合的な温室効果ガス排出削減計画の策定および2050年のネットゼロに向けた取り組みを推進することを表明しています。上記の「気候変動への対応についての基本的な考え方」では気候変動への適応にも企業責任を果たしていくことを表明しています。
エネルギー効率化
2025年度は、各事業所での再生エネ利用推進(風力発電設備の更新など)、省エネルギー対策(冷凍機・空調関連の省エネルギー機器への更新、LED照明の導入など)を中心に、約14億円の投資が完了しました。
再エネ導入
再生可能エネルギーの利用は、最も有効な気候変動対策の一つです。アステラスは、太陽光や風力発電、バイオマスボイラーなどの設備導入、または再生可能エネルギー由来の電気の購入によるGHG排出抑制に取り組んでいます。ネットゼロの達成の助けとなる再生可能エネルギーの利用を拡げる取り組みを継続していきます。
エネルギー使用量
| 対象 | エネルギー種別 | 単位 | 2022年度 | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| グローバル | 総エネルギー使用量 | MWh | 581,432 | 558,039 | 494,739 | 452,695check_box |
| うち再エネ由来 | MWh | 109,022 | 103,504 | 93,083 | 128,390check_box | |
| 比事 | 19% | 19% | 19% | 28%check_box | ||
| 総電力使用量*1 | MWh | 227,486 | 228,688 | 207,703 | 197,799check_box | |
| うち再エネ由来 | MWh | 97,531 | 90,527 | 80,059 | 116,029check_box | |
| 比事 | 43% | 40% | 39% | 59%check_box |
2020年4月から茨城県内の3つの事業場において購入する電力の全てを再生可能エネルギーに切り替えました。2025年度からは、焼津事業場、富山事業場においても再エネ活用を拡大しています(2025年の削減インパクトは、温室効果ガス約40,000トンに相当。)
また、日本以外でも可能なエリアから再エネ由来の電源への切り替えを推進しており、再エネの利用が可能な機会の探索は今後も継続します。今後、再エネ利用についての目標を策定する検討を進めています。
医薬品包装の環境配慮
医薬品の包装には、製品の安定性の保持や医薬品医療機器等法など各国法規で定められた事項の記載などの機能が必要です。アステラスではこれらに加え、環境に配慮した材質の選択や、廃棄の際にリサイクルを促す材質表示などの取り組みを行っています。
取り組みの一環として、ブリスターシートに植物由来の原料から作るバイオマスプラスチックの採用を開始しました。本ブリスターシートは、バイオマスプラスチックであるサトウキビ由来のポリエチレンを原料の50%に使用しており、環境に優しい包装です。ブリスターシートには高い錠剤保護機能およびユーザビリティ(使いやすさ)が求められますが、長年にわたり培ってきた包装技術を駆使することで、これらの要件を満たしつつ大量生産が可能なブリスターシートの製造を実現しました。2021年度から、植物由来の原料から作ったブリスターシートの利用が日本向け一部製品で始まりました。
サプライチェーンでの温室効果ガス排出量の把握
アステラスは、サプライチェーン全体での排出(スコープ3)の把握にも努めています。スコープ3の重要な排出源からのGHG排出についてもSBTを設定し、その削減に取り組んでいます。また、生産委託先をはじめ取引先にもGHG排出削減に向けた取り組みに賛同・協力いただく働きかけを行っています。スコープ3 GHG排出量の詳細は、EHSデータページに掲載しています。
Scope 1+2
基準年である2015年度からのScope 1+2排出量の削減率は、2025年度において60%でした。主要な製造および研究拠点における再エネ由来電力の活用、営業車のCO2排出削減などが寄与しています。
2025年度の高岡工場の操業に由来するScope 1+2排出量は2,513トンでした。操業の終了により、2026年度以降はこの排出量が削減されることになります。
2025年度に実施した気候変動対策投資(再生可能エネルギー利用推進、省エネルギー対策)は、GHG削減効果として2,348トンとなりました。再生可能エネルギー導入などの投資計画について、継続的な検討を行うこととしています。
アステラスは、2008年度から営業用車両の利用に伴うGHG排出量の削減に取り組んでいます。各地域で、環境負荷の小さな車両(例:ハイブリッド車、電気自動車)への切り替えを継続的に進めています。ハイブリッド車の導入率が高い日本およびアメリカでは、車両台数に対するGHG排出量が他の地域よりも抑制されています。 営業車の利用に伴うGHG排出量は、スコープ1(燃料使用)およびスコープ2(電気自動車での電気使用量)として報告しています。
| 単位 | 2015年度 | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 営業車利用による排出量 | t-Co2 | 28,725 | 13,380 | 13,323 | 10,707check_box |
実燃料使用量を把握できない場合は、燃料購入費用、社用車・自家用車(営業活動に利用している場合)での平均的な年間燃料使用量などからCO2排出量を推定算出しています。アジア・オセアニア(一部を除く)のデータは含みません。
GHG削減目標
アステラスは、気候変動のパリ協定の1.5℃目標に整合的なScope 1+2目標と、well-below 2℃目標に整合的なScope 3目標を策定し、SBTiからの承認を経て、2023年1月に公表しました。
アステラスのGHG排出削減目標はアステラスグループ全体を対象としており、地域・事業による除外はありません。GHG種類としてはエネルギー起源CO2の排出を対象としています。グローバルの生産拠点および日本の研究拠点から排出されたフロン類のCO2換算値は別途集計され、2025年度は518 t-CO2eでした。
Scope 1+2排出量は年平均の削減目標を4.2%としており、パリ協定の1.5℃目標と整合的です。Scope 3排出量は年平均の削減目標を2.5%としており、well-below 2℃目標と整合的です。Scope 1+2、Scope 3ともに基準年を2015年度としています。アステラスのGHG排出量目標は5年ごとに見直します。次回の見直しは2028年1月までの最終化を目標として取り組む予定です。
ネットゼロ目標
2015年を基準に2050年までにGHG排出量90%の削減と10%の残余排出量の中和化によるネットゼロの達成を目指します。中和化はカーボン除去(Carbon Dioxide Removal, CDR)が想定されますが、具体的な除去の手段については今後の技術進展を踏まえて検討予定です。
総エネルギー消費量(MWh)
2025年度の総エネルギー消費量は、450 GWh であり前年より9%(45GWh)減少しました。各地域とも空調機器の運転による電気の使用量が多いため、エネルギー使用量に占める電気の割合が高くなっています。継続的な省エネルギー活動、高効率機器の導入などによりエネルギー使用量の削減に努めています。
エネルギー使用量の内訳については、ESGデータページをご覧ください。
アステラスは2025年度においてGHG除去を活用していません。
アステラスは2025年度においてカーボンクレジットを使用していません。
再エネ電力の調達手段としては、自社で設置した太陽光パネル、風力発電設備で発電された電力に加えて、再エネ電力とみなされる電力メニュー、オフサイトコーポレートPPAの活用などを行っています。
アステラスは2025年度において全社的な内部炭素価格を導入していません。
2030年以降の温室効果ガス排出削減の取り組みは現在の取り組みをレベルアップさせる必要があると認識しており、気候変動対策の投資および費用の判断のために必要なレベルの内部炭素価格の導入について、検討予定です。
アステラスへの財務インパクト評価は、4つの災害(洪水、風、山火事、熱波)について実施されました。洪水、風、山火事については、すべての期間における影響を集計し、確率加重した平均年間損失として評価しました。熱波については、最高気温が35℃を超える日数に基づく生産性損失として評価しました。
>4℃シナリオでは、2050年に洪水、風、熱波、山火事による総財務損失は30億円と推定されています。洪水は直接損失総額(19億7千万円)のほぼ3分の2を占め、そのうち67%は富山技術センターにおける推計値です。富山における洪水による潜在的損失は、すべての災害による直接損失総額の44%を占めています。強風は直接損失総額の1/3(9.9億円)を占めています。建物の損害による損失は強風による直接損失の66%を占めています。財務影響が最も大きい拠点は、台風の頻発地域に位置しています。2050年に気温が4℃を超える場合、熱波はアステラスにとって最も重大な気候災害の一つですが、このリスクによる財務影響は他の災害と比較して限定的です。これは、アステラスのすべての拠点に適切な空調換気システムが設置されており、定期的に更新・メンテナンスされているためです。
富山技術センターは、>4℃シナリオにおいて2050年に洪水の影響により15億円の損失が推計されています。下の棒グラフは、富山を除くアステラス施設における総損失額上位10施設を示しており、強風や洪水がアステラス施設に影響を及ぼすことを示しています。
損失の可能性がある上位10拠点(富山技術センターを除く)